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- 2023/04/11
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令和4年度 理科サイエンス研修 小笠原諸島・父島 自然探究活動
本校の理科(生物科)主導で、生物や生態系、環境問題を体験的に学ぶサイエンス研修が、令和5年3月27日(月)から4月1日(土)の5泊6日の日程で行われました。第2回の研修地は、世界自然遺産の小笠原諸島・父島です。高校生7名、中学生3名が、父島でフィールドワークに取り組みました。以下はその活動内容の報告です。
1.3月27日(月)~3月28日(火) 竹芝桟橋から父島二見港までの24時間の船旅
水戸駅に6:30に集合し、バスで竹芝桟橋に向かい、そこから「おがさわら丸」に乗船しました。午前11時、小笠原村観光局やナショナルランドの皆さんに見送られ、1000km離れた小笠原諸島の父島に向け出港しました。船上で昼食をとり、14時からは小笠原諸島に関する船内レクチャーを受け、その後は自由行動です。各自、広い船内を探検したり、読書などしたりしながら、ゆっくり過ごしました。服用した「アネロン」の効果からか、心配した船酔いは全員大丈夫でした。楽しみのサンセットは雲が多かったのですが、刻々と変わる空の色が素敵でした。しかし、その後、天気が崩れ、夜の星空観察はならず、ちょっと雨が降り出しました。夜明け前には雨は上がっていましたが、残念ながら雲が厚く日の出はダメでした。船は定刻通りに父島の二見港に到着。私たち一行を歓迎するセレモニーに生徒たちは感動していました。
2.3月28日(火)午後 ネイチャーガイドと巡るフィールドツアーⅠ
父島に到着して、生徒たちは、早速、港の横の大村海岸の海の色を見て大興奮です。曇りですが、エメラルドグリーンの海は確かに綺麗でした。
午後はネイチャーガイドのマルベリーの吉井さんの案内で、父島全体を把握するための研修です。小笠原ビジターセンターで島全体の解説を受けた後、車2台に分乗し、島内の岬や海岸、森を回りながら、父島の地形や自然を観察しました。たくさんの固有種と外来種が隣り合わせの父島の自然の保全への取り組みやその難しさをレクチャーして頂きました。また、外国人が最初に定住した歴史的背景やその後入植した日本人との間で育まれた文化などについても学びました。そして最後に訪れた宿の近くの大神山公園では、固有種であり絶滅危惧種であるアカガシラカラスバトを見ることができました。夜は「うわべ家」さんで食事をし、島寿司に亀の刺身を頂いて生徒たちも大満足していました。夜は雨の降る中、とびうお桟橋に移動し、サメやエイを観察して宿に戻りました。
3.3月29日(水) ネイチャーガイドと巡るフィールドツアーⅡ 世界自然遺産の森コース
この日のテーマは父島の森林生態系です。まずは海岸林が発達している小港海岸へ車で向かいます。途中で雨がポツポツ降ってきて次第に本降りに。海岸に到着すると雨が上がったのでちょっと一安心し、河口付近に発達しているマングローブ林のような林や砂浜に発達しているテリハボクなどからなる海岸林の観察を行いました。森の中では、天然記念物である大きいムラサキオカヤドカリや外来種として問題になっているグリーンアノールを見つけて、生徒たちは楽しんでいました。森のあちこちにグリーンアノールがいて、その生息密度には驚きです。希少な昆虫たちが食べられて壊滅状態になるのも納得です。
そこから中央山に向かう予定でしたが、再び雨が本格的に降り始め、山はガスで視界不良となり、行先を変更し夜明山の戦跡群に向います。高角砲の防空砲台跡や海軍の十年式十二糎高角砲を見学、父島の森には至る所に陸軍や海軍の遺構があり、これも驚きでした。その後、雨がどんどん強くなっていくので予定を切り上げて、一旦、二見港に戻って船客待合所で雨宿りして昼食休憩です。
午後は、東平アカガシラカラスバトサンクチュアリーへ。入り口で外来種除去のためのマットで靴の汚れを落としてから中へ入ります。最初はムニンヒメツバキなどが見られる乾性低木林でだんだんと湿性の高木林へ植生が変化していきます。オガサワラビロウやノヤシの森はこれまで見たことのない亜熱帯のジャングルでした。森の中ではオガサワラアメンボや木生シダのマルハチ、父島でしか見られないメヘゴを観察してきました。
研修自体はかなり楽しかったのですが、一日中、雨の中での森歩きで生徒たちは、かなり疲れてしまいました。雨のため予定のコースを回れなかったので、最後はちょっとテーマから外れるのですが小笠原水産センターに立ち寄り、小笠原海域の魚のお勉強やアカバの歯磨きを体験してきました。また雨のため、残念ながら夕方のウェザーステーションでのサンセットを見る計画も断念しました。
4.3月30日(木) パノラマボートツアー(ホエールウォッチング・シュノーケリング・南島)
この日のテーマは小笠原の海で、ボニンブルーと呼ばれる小笠原の青い海を堪能する一日です。
まずは二見港を出て最初の目的地である南島を目指します。ザトウクジラやイルカ、アオウミガメを探しながら進むと、すぐにハシナガイルカの群れに出会って生徒も私も大興奮です。またアオウミガメの交尾シーンも観察することができました。
風と波があり心配でしたが、南島へも無事に上陸です。快晴で最高の景色を堪能し、ヒロベソカタマイマイの半化石の観察を行いました。しかしそこから天気は一転、雨が降り出し一気に体温が奪われて、次の兄島海域公園までは苦行でした…。
午後の最初はシュノーケリング体験、やっとここで晴れ間が戻り、ウエットスーツを着用して海に入ります。透明度や魚の多さに生徒たちは大喜びで、制限時間ギリギリまでサンゴや魚の観察に夢中に取り組んでいました。そして最後はホエールウォッチング。船を走らせながら、潮吹きや海面の変化を、目を凝らして探していきます。ほどなくクジラを確認。ザトウクジラの親子の仲睦まじい姿や遠目ながらブリーチと呼ばれるジャンプを観察することができ大満足です。
夕方からはウェザーステーションに上りましたが、またもやサンセットはダメでした。夕食後はとびうお桟橋でシロワニ(絶滅危惧種のサメ)の観察し、その後は宿に戻って星空観察、とっても充実した1日でした。
5.3月31日(金) 午後 海洋環境学習ならびウミガメの放流
研修最終日のテーマは海洋環境の保全です。小笠原諸島は日本で最大のアオウミガメの繁殖地です。しかし、その生息数は、1800年代後半から1900年代にかけての乱獲により激減してしまいました。その後のアオウミガメの長期にわたる調査や資源保全の努力の結果、回復の兆しがみられるようになりました。
今日は、アオウミガメの人工ふ化放流に取り組んでいる小笠原海洋センターを訪問し、ウミガメが置かれている現状について学びます。到着後、早速ウミガメの生態や歴史と現状がわかる「ウミガメレクチャー」を受けました。そこからスタッフの方に館内の飼育水槽を説明して頂き、かわいいウミガメたちへの「給餌体験」や本物のウミガメに触れ合える「甲羅磨き体験」をしてきました。
そしてラストは、センターで1年間飼育されてきたウミガメを海に放流するイベントです。ウミガメの甲羅長や体重を測定し、「くらりん」と「ひこぽん」と命名して、製氷海岸に2頭を放流し見送りました。ウミガメの生態に驚き、直接触れ合うことで、きっと参加した生徒たちは、「ウミガメ大好き!」になったと思います。また「海洋ゴミ」や「地球温暖化」とウミガメの関係を学び、環境問題についても考えることができました。
6.3月31日(金)~4月1日(土) 父島二見港から竹芝桟橋までの24時間の船旅
村役場の方々の送別セレモニーの後、後ろ髪を引かれながら「おがさわら丸」に乗船です。二見港には、島の見送りの方々が集まり、何とも言えない雰囲気です。島の人々からは「いってらっしゃーい」と声を掛けられ、私たちも「いってきまーす!」と応えます。もう一度、父島に来たいと生徒も思ったはずです。船は定刻の15時に出港、そして港からは「おがさわら丸」を追いかけてくる船がたくさんです。父島名物の地元ボートのお見送りに生徒は感動していました。
5泊6日のサイエンス研修が無事に終了しました。小笠原諸島には、海洋島として独自の進化を遂げた固有の動植物が多く、クジラやイルカをはじめ多くの海洋生物が生息している自然豊かな島々です。生徒たちはその地に身を置き、本物に触れ自分の頭で考えながら自然や環境保全について理解を深めることができたはずです。父島への滞在は3泊4日でしたが生徒たちは非常に貴重な経験をしました。きっと一生忘れることのない濃密な時間になったはずです。
この実習の実現にあたり本当に多くの皆さまにご助力頂きました。ご支援を下さった皆様方に深く感謝いたします。
文責 生物科 教諭 檜山 俊彦