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  • 2022/04/07
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茨城高等学校・中学校 サイエンス研修 西表島自然探究活動

本校の理科(生物科)主導で、生物や生態系、環境問題を体験的に学ぶ、サイエンス研修が3月24日(木)から3月30日(水)の6泊7日の日程で実施されました。中学3年生から高校2年生の中から集まった15名が、西表島でフィールドワークに取り組みました。
「自分の五感を駆使して生物を理解する」
「本物に触れ自分の頭で考えながら生物に対する理解を深める」
このようなテーマで、現地の「くまのみ自然学校」の協力を頂き、マングローブ林や亜熱帯多雨林、目の前に広がるエメラルドグリーンの海など、西表島の大自然を舞台として、様々な探究活動を行いました。
以下にこの様子を紹介します。


3月24日(木) 1日目
昨年度は新型コロナの影響で実施できなかったこの研修ですが、今年は何とか実施の運びとなりました。いよいよ西表島自然探究活動のスタートです!
初日は大移動、水戸から約1600㎞離れた西表島を目指します。水戸を7時に出発し、羽田から石垣島へ飛行機で移動し、石垣島から船で西表島に向かいます。実に移動時間は11時間、現地到着は18時です。
到着後、宿で美味しい八重山料理を食べたら、早速プログラムの開始です。くまのみ自然学校の伊谷氏をお招きし、干立集落での過ごし方や実習に関するオリエンテーションを行いました。そのあとは、外に出てナイトプログラムに取り組みます。集落の外れまで移動し、耳を澄ませてカエルの鳴き声を聞き分け、何種類のカエルがいるかを探ります。また、植物の葉の匂いや味、樹皮の肌触りから樹木の種類を判別したりし、まさに五感を使ったフィールドワークを行いました。
明日は、ちょっと天気が心配ですが亜熱帯多雨林の探検です。

3月25日(金) 2日目
西表島で迎えた初日の朝、早起きをして海岸線を散歩している生徒がたくさんいました。また、釣り竿を出して海の魚を狙う生徒もいました。島で過ごす貴重な時間を余すところなく満喫したいという生徒たちの姿に感心です。
朝食の後は、森林実習「西表島の森に行こう」です。沖縄最大の河川である浦内川を船で軍艦石まで遡り、そこから聖地カンビレーの滝を目指してのトレッキングです。道中、生徒たちはワークシートを活用しながら、亜熱帯多雨林の動植物の観察に夢中で取り組みました。キノボリトカゲを捕まえたり、大きな木性のシダであるヒカゲヘゴやギランイヌビワの巨大な板根に驚いたり、色々な生物を探しながらのアッという間の6時間でした。
そして宿舎に戻ってからは、図鑑やネットを活用して観察した動植物の検索をして実習の振り返りをしました。美味しい夕食の後は明日の亜熱帯の海での活動に備えて、サンゴ礁の講義受講です。
今日も一日たっぷり研修できました!

3月26日(土) 3日目
今日の午前は「サンゴ礁で釣りをしよう」という船上実習です。沖縄県の県魚であるグルクンを狙います。15名のメンバーのほとんどが釣りも小さな船に乗るのも初体験で、どうなることやら心配です。
ちょっと風が強く、小さな船は大きく揺れます。やはり生徒の半数が船酔いとの闘いになりました。この日は水温が低く、魚の活動は今一歩。中々、ヒットしません。船長さんが、何度もポイントを変え、ようやく目的のお魚に出会えました。魚を釣り上げた生徒たちは大喜びで、貴重な体験になったと思います。
午後は「地質学実習」です。座学とフィールドワークから、西表島の誕生を読み解く実習です。八重山諸島の地質学的特徴を学び、実際に第三紀中新世に堆積した八重山層群と呼ばれる砂岩や頁岩の地層を観察しました。この地層の間には沖縄や八重山諸島では西表島にしかない石炭層が挟まれています。実際に黒々とした石炭層の露頭を観察し、波に削られた石炭を手に、数千万年の時間の流れを感じとりました。
16時からの自由時間はシュノーケリングに挑戦です。本来、この実習の中でサンゴ礁の生き物たちの観察を実施する予定でしたが、水温が期待通りに上がらず、実習としての実施を断念しました。でもどうしても海に入りたいということで、短時間ですが水温が上がったタイミングで干立の海岸の端にある岩礁地帯でシュノーケリングをしました。イソギンチャクと共生するカクレクマノミやブルーのルリスズメダイなど、生徒たちは夢中になって熱帯魚を追いかけました。
そして夕食は自分たちで採った魚や貝を味わい大満足、夜は眠気と戦いながら次のマングローブ実習のための講義です。

3月27日(日) 4日目

今日の午前中は、マングローブ林での実習です。活動場所は宿舎のすぐ裏のヨナダ川の河口で、ここには広大なマングローブ林が広がっています。
このマングローブ林には5種類の純マングローブ植物が分布します。各々の種は、塩類への対応や根や葉の形態が異なります。このヒントだけで、生徒たちはグループで協力しながら、5種類のマングローブ植物を探します。その合間には、干潟に生息する魚やカニ、貝類も一緒に観察です。葉の手触りの違いや噛んだときの塩味の違い、葉や呼吸根の形態の違いなど、先生にヒントをもらいながら、何とか無事に全グループが全種を発見できました。小雨が降る中での活動でしたが、とても充実した3時間でした!
午後は自分たちで観察し記録した各々のマングローブ植物の特徴を比較し、5種類の見分け方を説明するポスターの作製です。5人一組のグループで、お互いに知恵を出し合いながらオリジナルの一覧表を完成させました。種の違いを一つひとつ理解し、全員が5種類の違いを指摘できるようになりました。最後に1班10~15分の持ち時間で発表会を行い、1日の実習の総括を行いました。
夕食の後はホタルの観察です。ホタル=川というイメージの生徒が多い中、山へと向かいます。最初は森の中を飛び交うヤエヤマヒメボタルの観察、次は土の表面で光るホタル幼虫の探索です。この実習で生徒たちのホタルのイメージはガラリと変化したはず。今日も充実した1日でした!


3月28日(月)5日目
今日の午前中は2グループに分かれて「海岸漂着ゴミ調査」です。
1チームは海岸20mの区間のすべての漂着ゴミを回収し、もう1チームは海岸150mのすべてのペットボトルを回収しました。回収したゴミは、みんなで手分けして分類し、分析しました。今回調査では、発泡スチロールやブイなどの事業ゴミが大半でした。ラベルから判別したペットボトルは大半が中国からのものでした(茨城の海岸でこの調査をすると大半は日本のものです)。
自然豊かな西表島の海岸に漂着するゴミの量は莫大で、これを回収し処分するのは極めて困難なのが現実です。また、小笠原諸島の海底火山の噴火により、海岸線に漂着した大量の軽石も観察できました。北風が吹く雨の中での実習でしたが、この実習を通じてゴミ問題とどう向き合うべきか、生徒たちもきっと何かを感じてくれたはずです。
午後は浦内川でカヤックの体験です。本流から支流に入り昨日とは違った目線でマングローブ林を観察することができました。昨日の実習のおかげで、生徒たちはマングローブ植物の種類をすぐに判別していました。初めてのカヤックでパドルの操縦に苦労しているペアもいましたが、何とか雨も上がり楽しく実習に取り組めました。

3月29日(火)6日目

今日は、やっと晴れてようやく南国らしい日差しです。恵まれた天候の中、生徒は最後のプログラムとなる自由研究に取り組みます。テーマはイリオモテヤマネコやリュウキュウイノシシ、カンムリワシやウミショウブに移入植物と様々です。昨夜考えた調査計画に基づき、午前はフィールド調査に取り組みます。グループごとに、集落内や畑を歩き、生物やその痕跡を探します。午後は、得られた調査結果をまとめ、考察を行います。夕食後の発表会に向けて、生徒たちはスライド作成に必死です。自分のテーマに没頭し、生徒たちは楽しみながら頑張っていました。
私は生徒のウミショウブの調査に同行しました。干立の海はウミショウブの大群落があったのですが、ここ数年で壊滅状態になってしまいました。原因はアオウミガメによる食害が原因とのこと。潜ってみると、海草が同じ高さで刈り取られている感じです。葉には食痕も残っていました。ウミガメを保護したら思わぬところに歪みがでるという、環境保全の難しさを本当に実感しました。
さて、西表島での最後の夕食ではサプライズがありました。予定にはなかったリュウキュウイノシシのたたきがテーブルに並びます。現地でしか食べられない一品は、とっても美味しく生徒たちも大喜びです。宿舎では、毎食、地元の食材を使った健康的な八重山の料理を提供して頂きました。これを毎日生徒たちは残さずに平らげ、研修期間中、生徒たちは元気いっぱいに過ごすことができました。「海の家南ぬ風」の皆さま、本当にありがとうございました。

3月30日(水)7日目

この1週間、大自然の中で生徒たちは非常に貴重な経験をたくさんしました。
西表島に生物観察のために1週間滞在するなんて、めったにできない体験です。きっと一生忘れることのない濃密な時間になったはずです。
研修を全面的にサポートして下さった「くまのみ自然学校」の伊谷ご夫妻、本当にありがとうございました。また、宿舎であった「海の家南ぬ風」の皆さま、生徒たちの健康への気配りに感謝致します。また地元の食材にこだわった八重山料理はとても美味しかったです。大変お世話になりました。
旅行全体をサポートして下さった茨城交通の吉川氏、行き帰りのバスの運転を買って出て下さったOBの今橋氏、この両名にも深く感謝致します。この実習の実現にあたり本当に多くの皆さまにご助力頂きました。支援を下さった皆様方に深く感謝いたします。ありがとうございました!
ありがとう西表島。また数年後に生徒と一緒に再訪できたらと思います。

文責 生物科 檜山 俊彦