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  • 2022/02/05
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髙木元君(高3) 江古田文学賞高校生部門受賞

 高校3年生の髙木元君が、日本大学芸術学部文芸学科に編集部を置く文芸雑誌「江古田文学」が主催する第一回江小田文学賞高校生部門を受賞しました。受賞作となったのは、高木君が槃栖鈴信(ほさいすずのぶ)のペンネームで書いた小説『胎児』です。講評を読むと、選考委員全員が第一候補として推薦した作品であることがわかります。
 今回の受賞を受け、高木君に校長から話を聞いてみました。

校長:まずは受賞おめでとう。受賞を知ってどう思いましたか?

高木:まさか自分の書いたものが、という驚きが第一でした。選考委員の方から受賞を知らされた時は、体が震えて涙が出そうになりました。評価していただいたことが素直にうれしかった。母親は自分の創作に理解をもってくれていて、一緒に喜んでくれました。

校長:コンクールに応募しようと思ったきっかけは?

高木:日大の芸術学部文芸学科を第一志望に受験準備を進めていく中で、江古田文学賞の存在を知り、第一回高校生部門の作品募集を知りました。せっかくなら応募してみようと思いました。3200字以内という応募条件の中で、作品を2週間くらいで書き上げました。

校長:創作を始めたのはいつごろ?また、そのきっかけは何?

高木:小学校入学前にマンガ雑誌を読んで、自分でも作ってみたいと思いマンガを描いていたのが自分の中で最も古い創作の記憶。散文は中学のころから書き始めました。高校ではコロナ休校の中でライトノベルやアニメの影響なども受けながら高2の冬にはまとまったものを書いていました。その後、澁澤龍彦を知り、強く感銘を受けました。

校長:受賞作はどんな思いで書きましたか?

高木:大げさに言うと、既存の考え方を壊してやろうという気持ち。内容もかなり攻めました。構想が決まった時点で、すごい作品が書けるぞ、という予感があり、書くしかないと思いました。

校長:たしかに「よい子のみんなはぜひ読んでね」とは勧めにくい作品だね(笑)。一人称の主体が、胎児から若い男へ、そして再び胎児へと入れ変わる。夢の中での整合性のような、この飛躍はどこから発想をえたのか?

高木:エドガー・ポーの『モレラ』『リジイア』『ベレニス』などの作品には、ポーの女性観があらわれています。『モレラ』は、死んだ妻が、妻の産んだ娘に転生して夫の前にあらわれるという物語。ポーの女性観や死生観にインスピレーションを感じました。

校長:作者に作品の解説を聞いちゃいけないのかもしれないけれど、前半と末尾で繰り返される「死とは胎児です」とはどういう意味?

高木:やはり、ポーの『リジイア』などから得た死生観を表現したかった。輪廻転生のようなイメージに近いです。

校長:「槃栖鈴信(ほさいすずのぶ)」というペンネームの由来は?

高木:受賞作の中にも少女の比喩で登場するが、ハンス・ベルメールからとりました。ハンス・ベルメールはエロティックで退廃的な球形関節人形で有名なドイツの人形作家。澁澤龍彦が日本に紹介した。槃(ハン)、栖(ス)、鈴(ベル)、信(メール)で、槃栖鈴信。選考委員の山下先生には、「このペンネーム、ハンス・ベルメールだよね?」と見破られました。

校長:もうすぐ卒業。茨城高校で過ごした3年間はどうだった?

高木:自分は高校から茨高にはいった高入生だが、周りの人たちのレベルが高く、いろいろな刺激や影響を受けました。書いた作品は、仲のいい友人3人に読んでもらっています。「ここの書き方がいいね」などと理解してくれる友人の存在が、創作の上でも背中を押してくれました。友人がいたから作品を書き続けられました。

校長:すでに総合選抜型入試で、第一志望の日大芸術学部文芸学科への進学が決まっていると聞きました。大学生活や将来の目標は?

高木:創作を続けていきたい。安定した将来のための進路選択も考えたが、日芸の文芸学科のキャンパスでさまざまな刺激を受けて、自分らしい表現をみがいていきたい。今の自分の価値観を見失わずに、将来も小説を書いて人に届けられるようになりたいです。

校長:茨城高校の卒業生で、残念ながら芥川賞、直木賞の受賞者はまだ出ていない。期待しています。今日は長時間ありがとう。

 ブラインドごしの暮冬の日の光が明るい校長室で、テーブルの上のパーテーションをはさみ、高木君と二人でコーヒーを飲みながら約1時間、インタビューというよりは楽しくおしゃべりをさせてもらいました。長くなってしまうので上の記事では省略していますが、江戸川乱歩や谷崎潤一郎、ダダイズムや耽美主義などについても話題が広がり、高木君の、高校生ばなれした知識や豊かな感性、論理的な話しぶりに感心しながら話を聞かせてもらいました。
 写真が苦手、という高木君のリクエストで、この記事の写真は高木君ではなく江古田文学108号となりました。